アトピーは治すためにステロイドを使うことがあります。
そもそもアトピーの人は肌のバリア機能が低下しており、通常は表皮の下にある知覚神経が表面に出ているのでハウスダストなどの影響を敏感に受け取り痒くなります。
痒みを我慢できずに掻きむしると、傷ができてさらにバリア機能は低下するので、アレルギー反応を起こしやすくなります。
ステロイドとは副腎で分泌されるホルモンの一つで、これを人の手で合成した外用薬を塗ると炎症が素早く収まります。
皮膚の細胞を活性化させる効果もあるので、掻きむしりによる傷が綺麗になって痒みも出にくくなります。
注射や内服薬によるステロイド治療もありますが、全身に影響を与えずにピンポイントで患部に作用する外用薬を使うのが一般的です。
アトピー患者の多くはステロイドの効果が強い一方で副作用があることを恐れています。
しかし皮膚から体内に吸収できる量はあまり多くないので、必要以上に心配したり処方された外用薬を塗らなかったりするのは間違いです。
確かにステロイドを塗ると毛細血管が拡張することで赤みが出たり、皮膚が薄くなったりすることがあります。
また水虫やニキビがある場所に塗ると症状は悪化します。
医師は肌に悪影響が出ないように、外用薬を塗る期間や薬の強さを調整しているので指示に従っていれば問題ありません。
薬の強さは5段階に分けられており、年齢や使用する部位などによって適した強さが決まっています。
炎症が治まった後で黒ずみができることがありますが、これはアトピーで掻きむしってできた色素沈着なので副作用ではありません。
アトピー治療では根本的に体質を変えることよりも、既に起こってしまった症状を緩和させる対処療法を基本としています。
根本的に治すことができれば症状に悩まされることもありませんが、長い歴史の中で分かってきたアトピーのメカニズムはまだ完全ではありません。
対処療法を受ける選択肢しかないのが現状です。
ステロイドは50年以上アトピー患者に処方されている実績があるので、正しく使えば効果的で安全な薬であると分かっています。
ステロイドを塗っただけでアトピーを完治させることはできませんが、辛い症状から早く解放されれば保湿してバリア機能を高めるなど日常生活での工夫に時間をかけることもできます。
副作用を怖がって炎症を放置し続けても、治るまでの時間が先延ばしになるだけなので医師に説明をよく聞いて積極的に治療します。